Lesson2-1 ヨーガスートラの始まりと八支則(禁戒、勧戒)

ヨーガスートラ

ヨーガスートラは心の健康、幸福、安定を得るためのヨガの基本概念であり、紀元前5~3世紀に哲学者パタンジャリによって編纂されました。

ヨーガスートラは非常に奥が深いため、さらに学びを深めたい方はヨーガスートラの解説書を手にしてみるのも良いと思いますが、本講座でインストラクターとして活動する際に必要となる知識をまとめました。

Patanjali_Statue

出典https://ja.wikipedia.org

さて、この「ヨーガスートラ」の中で解説されているヨガは「ラージャヨガ」といい、瞑想を通じて本当の自分を見つめ直し、自分とは何者か、どう生きるべきかを内側から見つける方法を説き、悟りを開くという方法です。また、ヨガを深めるための八段階の学び「八支則」というシステムが示されており、さまざまなヨガの考え方のベースになっています。

八支則

1,禁戒(ヤマ)「日常生活の中で行ってはいけない5つの心得」

①アヒムサ(Ahimsa)/非暴力、不殺生
生きとし生けるものへの哀れみや思いやり。

これは行動、言動、精神面、思考など、全てにおいて言えます。誰に対しても怒りや暴力をふるってはいけない。無理はせずに、自らの体を大切にすることから始まります。

②サティヤ(Satya)/誠実、正直
嘘をつかないこと。

どんなときも「自分の身を守るため」を目的とした嘘はついてはいけない。ヨガにおいても、アーサナ(ポーズ)を深めるための肉体への負荷を避け、無理のない範囲で行う

③アスティヤ(Asteya)/不盗
他人の物、時間、信頼、権利、利益などを盗んではいけない。

これは、約束の時間に遅刻したり、行列に割り込んだり、 相手の話をきちんと聞かずに割って入ることも時間を奪っていることになります。自己中心的な行動を慎み、物やお金、名声などに妬まず、すでに手にしているものに感謝することが大切です。

④ブラフマチャリヤ(Brahmacharya)/禁欲
エネルギーの無駄使いはしてはいけない。

もともとは、男性を対象とした教えで、性欲にエネルギーを注ぐのではなく、必要なところに集中させるようにと言われてきました。現代では、いかなるときもパートナー意外の異性と性的関係を持たず、愛や生命を育むための性へのエネルギーとして使うことを説いています。

⑤アパリグラハ(Aparigraha)/不貪
貪欲さを捨てること。

必要以上に物を所有すると、執着心が湧き、それがなければ不安や恐れを生み、幸福の基準が乱れます。自分にとって本当に必要なものだけを所有するライフスタイルだと、いま目の前にある空気、食べ物、友人、体などに思考が働き、独占欲から解放され、自然の産物から幸福を感じることができます。

 

2.勧戒(ニヤマ)「日常生活の中で行った方が良い5つの心得」

①シャウチャ(Saucha)/清浄
自分の身体と心を常にきれいな状態に保つこと。

他人に不快感を与えないことを前提に、身だしなみを整えることをはじめ、身の回りの空間なども清潔にすること。すると意識がすっきりし、内面を見つめる余裕や心構えができることでさまざまな問題が解決へ近づきます。

②サントーシャ(Santosha)/満足、知足
今手元にあるものに常に満足すること。

自分が置かれている状況や環境、人間関係、健康状態、それらを不満足と捉える思考を排除し、あるがままを受け入れ、感謝することで、さまざまなものによって満たされていることに気づきます。欲望や変化を求める前に、手元にある一つひとつに感謝することが幸福への近道です。

③タパス(Tapas)/苦行、自制
精神強化のための自己修練。

生きていく限り、仕事や日常における小さな問題から、人生の壁とも言えるほど大きな試練が立ちはだかることもあります。そのような場合でも、自分自身の成長の糧として受け入れられる強さを養うこと。ただし、我慢をしたり、自分を痛めつけることはアヒムサに反します。

④スヴァディアーヤ(Svadhyaya)/読誦、学習
精神向上のために書物を読むこと。

たとえば、聖典や名著など、自分自身を良き方向へ導く本を読み、心身を理想に近づけること。自己をより深く知ることを意味しています。

⑤イーシュワラ・プラニダーナ(Ishvarapranidhana)/自在神祈念、信仰
信仰心を持ち、それに祈りを捧げること。

神を信じ、身をゆだね、万物に対して感謝な気持ちを持ち、献身的な心で寄り添うこと。また、自分の限界を受け入れ、意志を放棄することを意味します。