苦悩の原因と対処法

ヨガと瞑想を邪魔する5つの悩みの原因

仕事やプライベートなど、生活の中で生まれる心の苦悩には5つの考えがあるとヨーガスートラを編纂したパタンジャリはいいます。その5つの苦悩から解放されるのもまた、自身の心の正しい在り方が必要だと説き、その対処法としてヨガを取り入れることが効果的と伝えられてきました。

4c7f977aa5386e88ba9c1df1774c20ec_s

では、5つそれぞれの心の苦悩とはどのようなものでしょうか。

  1. アヴィッディヤー(無知)※すべての問題の根源
  2. アスミター(強い自我)
  3. ラーガ(激しい欲求)
  4. ドヴェーシャ(憎しみや嫌悪)
  5. アビニヴェーシャハ(恐怖、死への恐れ)

私たちの心や体は、この5つの心の悩みが原因でさまざまな苦しみや違和感に苛まされています。また、これら5つの原因が実際に症状として表に出てくるまでには4つの段階があるとされ、1つ目にプラスプタ(苦悩が潜在的に眠っている状態)→2つ目にタヌ(表面化した問題を意志で抑制している状態)→3つ目にヴィッチンナ(問題が表面化してしまっている状態)→4つ目にウダラーナ(苦悩が完全に現れている状態)といったプロセスを経て症状として表に出てくるのです。

苦悩への対処法

ここでは、5つの心の悩みの原因を引き出す、4つの段階の対処法を見ていきます。

1,プラスプタ(潜在的な状態)への対処法

自分自身を知らないということは、アヴィッディヤー(無知)に該当し、すべての苦悩を生む入り口ともなるため、自分とは何者かを理解するために何度も繰り返し自分を見つめ直し、見極めること。また、噓偽りのない自分でいつも揺るがず、とどまること。

2,タヌ(意志で悲しみ、苦しみ、怒りなどの感情を抑えている状態)への対処法

想念を取払い、自己実現へ導く「瞑想」の実践で解決できます。苦悩が症状として現れる前、ヨガの力の見せ所です。自身の意志の力と瞑想の力で潜在的な苦悩に対処することができます。

3,ヴィッチンナ(苦悩を抱えているが、職場や公共の場、親しい人など第3者のいる環境では出せない状態)

規則正しい生活を軸に、自分を知るための学びとクリヤーヨガ(毎日ヨガに生きること)で解決へ向かいます。

4,ウダーラーナ(苦悩が最高点に達し、感情が溢れ出てしまう状態)への対処法

3,のヴィッチンナ同様。

 

4つの段階の1,(プラスプタ)と2,(タヌ)のまだ表に出ていない苦悩の原因を、スークシュマ(潜在的な状態)と言い、この状態にしっかりと対処をすれば心に問題は起きないとされています。しかし、最も重要視されるのは、「すべての問題の根源である無知を乗り越え、真実を見極めること」。そのためには、常に学ぶ姿勢と自分とは何者かを知るための瞑想を継続することが非常に大切です。

ですが、それでも避けては通れない問題に直面し、感情が表面化しそうになったときには、すぐにプラティパクシャ・バーバナ(逆転の発想)を実践すると良いとパタンジャリは教えます。プラティパクシャ・バーバナは、ネガティブな想いに心をゆさぶられたときは、ポジティブな想いを呼び起こす考えや言動を取ることです。

たとえば、他人がコンプレックスに感じていることや傷つけるようなことを言ってしまいそうになった時は”器の大きい人ならこんなこと言うだろうか”と考えたり、”自分が尊敬しているあの人なら言わないだろう”というような発想を呼び起こし、あえてその反対の言葉を口にするよう努めることです。

嘘や他人を傷つける言葉など、その場限りで自己の満足を得ようとする考えや言動をプラティパクシャ・バーバナで制御することで、結果的に自分が苦悩の根源から解放されることにつながります。